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2024-10-25 11:58 PM #563
なかまくら
参加者座っている大きな影があった。
「暗い場所だ」 と、巨人はつぶやいた。
「ご苦労様でした」 怪物がやってきて、隣に座った。
「座談会でもしようというのか」 巨人は身体をひねって、手渡されたボトルを受け取った。中で、明滅する光が綺羅綺羅と踊る液体が見えた。
「まあ、そう言わずに」 怪物は、雲母の黒い塊を一枚めくって、食べた。それから、巨人にも差し出す。
「一枚食べないか。ふるさとの味なんだ」 怪物はバリボリと咀嚼しながら、行儀悪く、勧める。
「いただこう」 巨人は受け取り、それを口に運んだ。
「・・・どうだ」
「・・・永らく忘れていた味のような気がする。これは、だが、血が覚えている。雲母だ。そう、鉱物の雲母」
「隕石によって、かつてこの星に大量にもたらされたものだ。侵略するための我々の食料としてだ。お前の祖先は、それを都合よく忘れてしまったのだ」 怪物は感情の入っていない声でそう言った。それから、こうも言った。
「だが、仕方のないことかもしれないな。それほどに、この星は美しかった」
「怪物のお前でも、そう思うのか」 巨人は少し驚いて、そう問いかけた。
「ああ・・・」 怪物は雲母をかじる。舌の上に故郷が広がっていく。
「私がすっかり、人の血が混じってしまったから、そう思うのだと、そう言い聞かせて生きてきた」
「随分と弱くなった」 怪物は戦いを振り返った。
「重力は小さいが、水は多い。草木は毒を持たないものも多く、生命を育んでいる。この星のその抱擁が、私を堕落させてしまった」
「お前を、ではない。お前の一族を、だ。我ら星人が、お前の一族をこの星に送ったのは、ほかでもない。力の継承を可能とする一族であったからだ。困難は世代とともに解消され、最後には、必ずや、我らに、第二のふるさとをもたらしてくれるものと思っていた」
「すまない・・・」
「不要だ。その謝罪には過ちに対するものではない」
「すまない・・・」
「不要だと言っている」
「ああ・・・」
「なんだ、少し疲れたのか」
「そうかもしれない。久しぶりに力を使ったから」
「人類は力を蓄えた。お前の力など、呼び覚ます必要がないほどに」
「白々しい。太陽フレアで電脳を持つ超兵器がオシャカになった、この日を何年も待ち続けていたんだろう。雲母も電気をよく遮った。」
「力が衰えたといっても、まだまだ見通す目は健在か」 雲母をめくって、齧った。
「すでに、私の代では、失われてしまった力だ。先々代の・・・祖父から借り受けた力をときどき、使わせてもらっている」
「そうか・・・。お前たちは滅びようとしているのだな」 怪物は、笑う。
「滅びるのではない。交じわるのだ。大切な人がたくさんできた。彼らは私を人として見てくれている」
「必要とされているのか」
「それはどちらだ。その能力か、それともひととなりか」
「戦う以外のことは、教えてもらってこなかった」 巨人は、俯いた。
「我々はそんなお前を歓迎するぞ!」 怪物は、笑った。そして、続けて言う。
「単純な理屈だ。強い者たちの世界だ。楽しいぞ」
その言葉に、巨人は頭をふった。
「私は、力を媒介する硬貨を使って、巨人の力を行使することができる。そんな弱い存在になった。・・・だが、これでいいと思っている。これは、力を手放す準備なのだ。電脳の超兵器も、私がただの人になるために助力してくれている・・・。」
いまは、そう思えるようになったのだ、と巨人は優しく笑った。
「やがて電磁波の影響から、復旧する。その前に、星に一度戻ることにする」
「ここで暮らさないか」と巨人は言い、
「ここには居場所はない。必要とされる場所こそが居場所なのだ」と怪物は答えた。
必要とは、その力のことなのか。
巨人は、そう言いかけて、やめた。大陸のあちこちに明かりが灯り始める。
自分もただ、守りたかっただけだったのかもしれない。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
久しぶりに書きました。星っぽい話にしたかったらこんな感じになりました。2024-10-26 10:47 AM #564けにお王
キーマスター怪物と巨人の座談会ですね。当初は地球を侵略する予定だったのかな。
それが、地球の美しさに絆されて考えが変わったのかな。
巨人は電磁波とやらで、人に化けていたのかな。
いずれにせよ、巨人は巨人であることがバレる前に出て行くってことかな。
人類は助かったのですね!
2024-10-26 10:51 PM #565ヒヒヒ
参加者かつて怪物の仲間であった巨人が、
今は人類を守るために怪物と戦う存在になったのかな、と思いました。万物が移り変わるように、戦う理由もまた変わっていく。
そうした戦いの末に、より良い結末を迎えられれたら良いですね。2024-10-27 6:10 PM #567なかまくら
参加者>けにおさん、ヒヒヒさん感想ありがとうございます。
ウルトラマンみたいなお話を書きたいな、と書き始めてみたら、1万文字を越えたところで、行き詰りまして・・・。とりあえず、ラストシーンをひとつ、空想してみようか、と書いたものがこちらになります。昔は自分の力だけで変身できていたウルトラマンが、おもちゃ会社の戦略で、だんだんと変身にいろいろなグッズが必要になったり、徒手空拳ではなくて、剣で戦ってみたりするのに、理由を付けたら何だろう、というのが着想でした。まったく一緒だとアレなので、宇宙から飛来する怪獣と戦うようにしてみた、という感じです。
>けにおさん
人類もいろいろと強いロボを作っていたのです! しかし、太陽フレアで電気系統をやられて、巨人の力に久しぶりに頼らざる負えなくなったということなのです! 雲母は絶縁体として昔から使われていた鉱物なのでした!>ヒヒヒさん
そうなんですよね。戦い続けるには理由が必要ですね。
代々、先祖から受け継がれてきた一族の使命・・・では戦えない。
いま、目の前で守りたいものがあれば、戦えるかもしれませんが、
守りたいものってなんだろうなって、そう考えると、巨人の彼には難しかったりするかもしれないですね。幸福な結末があるといいなと思っています!2024-11-09 12:11 PM #571tosiniyama
参加者なんか冒頭がウルトラファイトの最終回をおもわせ良いです。円谷プロの怪獣倉庫の暗い片隅で着ぐるみ同士が会話しているようで。形而上的な外宇宙風景と場末の日常が直結するクトゥルフ暗黒宇宙神話か。ある意味ではセカイ系ではないでしょうか。
2024-11-14 11:31 PM #572なかまくら
参加者>tosiniyamaさん
感想ありがとうございます。そうなんですよ! そういう感じを目指していたのです。形而上的な、でも工学の皮を被ったキングジョーなんかも、登場させたかったのですが、雲母によって、電気回路を絶縁されてしまったという顛末でした。確かにセカイ系ですね。もう少し群像劇ぽくしたほうが、物語に厚みが出る気がしますね。 -
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